リブセンス村上太一社長「なりたかった社長」(1)

副業のヒント

私自身、なにかプランを考えるときには、このリブセンスの村上太一社長の「起業する動機」を読み返します。

日経BP社の対談、私自身の備忘録のために残しました。

村上:古市さんは確か私より2歳、年上でいらっしゃいますよね。

古市:村上さんは26歳? 僕は今、28歳ですが、何月生まれですか。

村上:10月です。

古市:僕は1月ですが、じゃあやっぱり、学年は2学年違いですね。どうぞよろしくお願いします。…それにしても村上さん、この本(『リブセンス<生きる意味>: 25歳の最年少上場社長 村上太一の人を幸せにする仕事 』)の写真と、実物とのイメージがまったく同じですね。写真では良い表情でも、実際に会ったら暗い雰囲気の人とかいるじゃないですか(笑

村上太一(むらかみ・たいち)
リブセンス社長。東京都出身。小学生のころに起業を決意、高校在学中に準備を開始し簿記二級、情報処理技術者試験などを取得。早稲田大学政治経済学部在学中、リブセンスを設立。求人ウェブサイト「ジョブセンス 」を立ち上げる。同社を創業2年で黒字化させ、当時史上最年少の25歳1カ月で東証マザーズに上場を果たした。
村上:ははは(爽やかな笑顔)。

古市:そういうギャップが全然ないことに、ちょっとびっくりしました(笑)。本はとても面白かったのですが、ひとつだけ、結局分からなかったことがあるんです。なぜそこまで「起業」したかったのか、という点です。

村上:あえてすごくシンプルに言うと、「社長ってかっこいい」と思っていたからでしょうね。

古市:おお。

村上:昔から周囲の人に喜ばれることが好きで、その延長に起業があったと思うのですが、思い返してみると小学生の頃から、社長になると言っていましたし、中学時代は友人に「将来、一緒に会社やろうぜ」と言っていました。

古市:「社長」になりたかった。

村上:はい。組織の中で最も影響力を持ち、コントロールできる役割がいいな、と。両祖父が経営者だったから、という理由が大きいと思います。

村上:小学生の職業選択というか、「何になりたいか」という憧れって、自分が知っている職業で、かつ自分がもっともしっくりくる職業になると思うんですね。ロックンローラーがかっこいいと思う人もいるでしょうし、職業がなんであれ、誠実な人がかっこいいと思う人もいるかもしれない。そうしたなかで、僕は祖父たちのような社長がかっこいいと思っていました。

古市:なるほど。ただ、小学校ではそれでいいとしても、実際に起業となると、事業の中身が大切になってきます。村上さんの場合は、あくまでも社長になりたいが先にあって、事業の中身は後から見つけたんですね?

村上:そうですね。

古市:そうした夢が先立つパターンだと、うまくいかない例が多いと思うんです。早稲田や慶應の大学生で「社長になりたい」と言っている人は、たいていうまくいっていないイメージが僕にはあります。

村上:確かにみんながうまくいくわけではありません。学生起業家同士のコミュニティーの存在も大事で、起業した者同士、会って話をしてお互いを励まし合いました。それでも、その中で今も残っている企業は数えるほどです。

古市:残っている割合はどれくらいですか。

村上:5分の1ぐらいですかね。

古市:残りの4は?

村上:起業した会社を畳んで、企業に就職している人がほとんどです。

諦めなければ、意外にゲームセットにはならない
古市:その違いは何だと思いますか。

村上:(即答で)覚悟。

古市:覚悟。

村上:スキルはそれほど変わらないと思います。違いは、立ち上げた事業をやりきるかどうか、です。

だって、諦めなければ、意外と会社って簡単に潰れないものなんですよ。学生ですから、自分たちのランニングコスト、つまり給料は最初の頃は0円でもいい。僕は途中から、5万円もらうことができましたけれど、5万円あればなんとか生きていける。

古市:その時は実家住まいですよね?

村上:はい。もちろん、従業員を抱えたら難しいです。でも、実家暮らしでなくても、創業者が住居兼事務所でやり続けようと思えば、5万円あれば最低限、続けられるはず。食事も牛丼250円ぐらいで一日1000円使って外食ですべてすませても、30日で3万円。なんとか生きていけます。

古市:でも、5万円となると、それこそマクドナルドでバイトするよりも時給換算すると安い。

村上:時給換算するとすごいです。自分で一度調べてみたら、数十円でした。

古市:数十円(笑)。それだったら、バイトするほうが楽に暮らせちゃいますよね。

村上:さすがに僕もちょっとそう思いました。

古市:そこまでしても起業にこだわった。なぜなんですか。

村上:「やると決めた以上は少なくともやり切る」というのが、私の中では当たり前なんです。

村上:たとえばマラソン。走り始めたのに少し息が切れたからといってすぐやめてしまうなんて、筋違いじゃないですか? もう少しギリギリまでやる、苦しくて本当にもうダメだと思う程度まで走る。それが競技だと私は思います。

会社も同じです。登記して、お客様もいて、という状況で、ちょっと苦しくなったからやめるなんて考えられません。

古市:僕の知っている例でいうと、もともとプログラミングが好きで、それがそのまま会社になったり仕事になったりしたというのは、わりとよく聞きますが、村上さんは「何がやりたい」ではなく、「起業」と「社長になりたい」ありき、なんですよね?

村上:そうですね。古市さんは先ほどから、社長になりたかった理由の本質を訊ねていらっしゃると思うんですが、「とにかく会社をやりたいから」に尽きます。

私も先が見えなくてつらくて、諦めそうになった時期はありました。起業して1年後くらいです。実際に、会社を譲渡する寸前まで追い詰められた。だけどその時、立ち止まって「自分はなぜ会社をやっているんだっけ」ということを改めて考えてみたんです。

それで自分の中から出てきた言葉が「幸せから生まれる幸せ」。弊社の経営理念ですが、これこそ自分が会社をやる理由だと再確認して、自分の軸はこれなんだ、と思った。そうしたら、ふっと気が楽になりました。

古市:自分の夢である社長という仕事をすることがすなわち幸せ、という意味ですか。

村上:私の場合はそうでしょうね。自分自身の幸せは何だろう?と考えると、やはり、その軸です。自分の幸せを最大化したいなら、今、とてもつらいけれど、会社を続けていく、という選択になる。そのうえで、社員もお客様も幸せになれるような事業を構築したい。

古市:ご著書を読んで、ユニークだな、と思ったのは、目的を決めたらそのために私生活を犠牲にしても動ける、というところでした。

たとえば大学時代は人脈やネットワーク作りのためにテニスサークルに入られたそうですね。これってすごい割り切り方だな、と。

「つらければそこそこで」対「止まると先が苦しい」
村上:目的のため、という感覚でもないんですけど。

古市:自然に動く感じですか。

村上:結果として目的のために動いているんでしょうけれど、目的はどちらかといえば本能からきているので、その目的に近づくための動きも本能かもしれません。

古市:本当に起業や会社を経営することが、本能に近い部分で目的になっている。

村上:そう感じますね。

古市:会社を大きくしたい、というのも同じ感覚ですか。本能ですか。

村上:やるからには最大化したいし、世の中からなくなったら困る「あたりまえ」になるものを作りたい。なくなっても困らないような、そんな意味のないものを作っても、つまらないじゃないですか。

古市:会社の規模もナンバーワンにしたい、とよくおっしゃっていますが、ナンバーワンに対して、やはりこだわりがありますか。

村上:やるからにはなりたいですよ。きっと誰もが思っているはずです。

古市:僕は、「つらいなら、そこそこでいいや」と思っていました。

村上:うーん、そうですか。つらいからそこそこでいいや、で止まった瞬間、その先が苦しくなるだろうなという危機感が、私にはあるかもしれません。

古市:危機感。

村上:立ち止まったら、どんどん衰退していく一方になりそうな気がして。

古市:今ここに安住する、といった生き方はできないタイプでしょうか。

村上:そう思います。

古市:たとえば、休日は何をされていますか?

村上:休日? 仕事です(笑)。

古市:休日にバーベキューに誘われたとして、それでもずっと仕事のことが気になっちゃうような感じですか。

村上:そんな感じですね。ただ、私としては、仕事だ、大変だ!って感じではないのですけれど。本当に仕事が好きなんです。たとえば飲み屋で何の話をするかといえば、やっぱりビジネスの話です。それ以外できないというか。

古市:うーむ。

仕事の話の方が面白い、そうじゃないですか?
村上:逆に、みんなはどんな話をしているんだろう?と思うので、ホームパーティーとかしている弊社の広報に「何話すの?」と訊ねてみるんですが、ビジネスの話はそんなにしないみたいですね。でも、ビジネスの話ばかりのほうが面白くないですか?

古市:うーん、どうかなあ。ただ、そうなると、女子会なんて理解できないでしょう?

村上:理解はできると思う。

古市:理解はできるけれど、自分が参加することは…

村上:考えられないです。女子会やホームパーティがダメとか、意味がわからないというわけじゃないんです。僕も歳を重ねるにつれて、そういう楽しさがあると理解できるようになりました。でも、「それを自分がやりたいかというと、そのタイプではないだろうな」と思います。

古市:そんな村上さんの、普段の交友関係をお聞かせいただけますか。仲が良い人、というのはどんな人が多いですか。

村上:経営者が多いですね。

古市:やっぱり仕事関係で。どんな場所で知り合うんですか。

村上:それは人それぞれですが、仲が良い人から「会いたいと言っている人がいるから会ってみて」といった紹介から、というケースが多いですね。

古市:そうやって、人脈がどんどん広がっていく感じでしょうか。

村上:そうですね。

古市:いわゆる経営者ネットワークといった会に所属していますか。

村上:一切所属していないです。

古市:フリーの立場で、仲の良い人たちと個人的な付き合いがどんどん広がっているんですね。

村上:そういう感じです。

古市:やはり、経営者の方々とは話が合いますか。

村上:合う気がします。

古市:村上さんは今26歳。年齢は村上さんが下という場合が多いと思います。年配の方でも話は合いますか。

村上:合いますよ。私はあまり年齢を気にしませんし。

古市:同世代の、たとえば大学時代の同級生とはもうあまり交流していないのですか。

村上:それは結構会っています。高校時代のテニス部で3年間、ずっと一緒に頑張った友人や、大学のサークルの仲間たち、学科が同じだった友人とも情報交換します。

古市:ああ、同世代とも交遊しているんですね。一番仲が良い人はどのコミュニティーにいる人ですか。

村上:コミュニティー……。うーん、属性でいえば、やっぱり経営者と仲が良いです。

古市:これだけ会社の規模が大きくなると違うかもしれませんが、今の社員の皆さんはもともとの仲間や友人が多いんですか。

村上:多くありません。最初の10人くらいまでは友人関係からでしたが、その後は人材紹介会社から採用しましたし、普通の企業と同様です。

古市:平均年齢は若いと思いますが、会社の雰囲気は大学生サークルや部活のノリとは違いますか。

村上:そういうノリとは違います。

『ビジョナリー・カンパニー』は社長になって初めて「読めた」
古市:ああ、そうなんですね。いろいろな企業のスタートアップを見ると、その段階でひとつのステップがあるな、と僕は思っています。

つまり、初めの仲良しや仲間だけでやる段階から、ある程度会社を大きくしてマネジメントをしっかりさせる段階へのステップ。そこでトップの仕事も変わると思うんです。戸惑いなどはありませんでしたか。

村上:ああ、戸惑いか…。思い返せば、ないこともなかったですが、分からなければ「どうやればいいんですか」「社長って何をやればいいですか」と、シンプルな質問ですが、諸先輩方にお聞きしました。

あとは、やっているうちに、自分が意図的に意識して手を出さないようにするほうがいいことがある、というのも学びました。自分で何から何まで全部やってしまうと社員が育たないとか、答えをいきなり教えてしまうとダメにしちゃうとか。

こういうことは本にもよく書かれていますが、腹の底からは理解できていなかった。でも、会社の規模の変化に応じて理解できるようになるんですね。同じ本を読んでも経験値によって、本当の意味で入ってくる情報は違ってくるんだな、と身を持って感じました。

古市:では、そんな村上さんが、この本は役に立った、と言える本はありますか。

村上:『ビジョナリー・カンパニー 』。創業前にも読んだのですが、なぜこれが名著と言われるかがわかりませんでした。「時計をつくる」ってなんだ?、そんなことより事業を立ち上げないとダメだろう、と。後から読み返してみたら、「ああ、なるほど」と理解できたんです。

古市:経営している身になったからこそ分かる?

村上:そうです。会社を経営し、いろいろな体験をして、組織の人数が増えていって、これからどう伸ばしていくか。

このことを考えるとそれは「時を刻む」ではなく「時計をつくる」という言葉が確かにしっくりくる。仮に自分がいなくなっても会社が存続し、成長し続けられるように、会社の基本理念をしっかり持つことの重要性に気づきました。

古市:なるほど。

村上:この本から、経験してみないと、「見えていても見えない」ことがあるんだな、と学びましたね。